【文学】父の日にちなんでイッキ読み!? 「SFの父」H.G.ウェルズの傑作小説ランキング

父の日に思い出したい、偉大な父がいます。イギリスの作家、ハーバード・ジョージ・ウェルズ。幾多のSF的ガジェットの生みの親です。科学的な知識を創作の世界に持ち込んだ彼は、ジュール・ヴェルヌと並び「SFの父」と称されています。

宇宙ロマンスのほか、骨太な評論も遺していったウェルズの世界へとお連れしましょう。

  1. 水晶の卵
  2. タイムマシン
  3. 宇宙戦争
  4. 透明人間
  5. モロー博士の島
  6. 解放された世界
  7. 世界文化小史
  8. 世界文化史大系
  9. 五島勉『H.G.ウェルズの予言された未来の記録』
  10. ダヴィドソンの眼の異常な体験

初出: 2016年05月11日

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14分

水晶の卵

タイトルが美しい…☆ そんな単純きわまりない理由で読んだ短篇によって、私はたちまちウェルズワールドへと連れていかれました。

水晶の卵』は、19世紀、骨董屋の店先にあった水晶(?)の向こうに見える“あの星”との交感を描いた、不思議な味わいのショートストーリーです。

地球人も覗きこんでいるけれど、かの星からも覗かれていたらしく……?

実は、後ほどご紹介する『宇宙戦争』の前日譚になっています。


創元SF文庫のウェルズSF傑作集に収録。

長編ほど知られる機会がないのですが、ウェルズの幻想的な掌編は、1つひとつの作品が見事に完成されたアイデア作品で好きさ☆

タイムマシン

時空を行き来できる装置「タイムマシン」が登場!
なんと1895年の作品です。発表当時、読む人すべての度肝を抜いたに違いありません。


マシン開発者の名前は作中には記載がなく、ただ「タイムトラベラー」とだけ呼ばれる人物が時空を旅します。そこで目にした、驚くべき人類の未来とは――!?

ウェルズの書くものは文明社会に批判的な面があり、『タイムマシン』にも薔薇色の未来は描かれていません。

自分の力で生き抜く力をなくした、ひ弱な未来人の姿に、私たちは少しずつそちらに近づいているのではないかと、不安に揺られてしまいます。

何はともあれ、時を旅するというアイディアは、人々をすっかり幻惑しました。100年過ぎてもわれわれ地球人はタイムスリップ物にまだ飽かず、本書の影響を受け続けていると言えます。

宇宙戦争

1898年に誕生した、侵略テーマの殿堂入り古典SFです。

火星のかたには失礼に当たるのでしょうが、困ったことに、地球人の私から読むと「金字塔」と呼びたくなるような、中毒性のある面白さです。

頭でっかちでグニャグニャした足を持つ、タコそっくりの宇宙生物の襲来で、われわれ地球人はすっかり大パニックを起こすのです。

私たちが頼みの綱にしている文明の利器は宇宙人に通じるのか………?

ただのパニック物ではなく、人間の思いこみや思い上がりを打ち砕くハンマーのよう。

透明人間

決して顔を見せない怪しい男が現れた時から、村に奇怪な事件が起きるようになる。

謎めいた出だしを経て、次第に明らかになっていく事態の真相とは――!?

娯楽小説と侮るなかれ。
科学者の野心と業、おのれが怪物と化していく苦悩を描いた“文学”です。

SF的なアイディアに焦点が当たりがちですが、ウェルズの初期創作小説は語りの巧みさも魅力の一つです。特に『透明人間』は、ウェルズの数多い著書の中でも特別ぐいぐい引き込まれる語り口をとくと堪能したい。

モロー博士の島

海難事故に遭った青年が引き上げられたのは、動物だらけの船でした。

動物を改造し人間化を進める、かなりの奇人変人ドクター・モロー登場!!
彼の狂える天才っぷりが最大の見どころです。
常軌を逸した人物であり、ぞっとするような記述もあるのでご用心を。


あくまでもエンタメ小説として、その途轍もないマッドサイエンティストっぷりを心ゆくまで堪能しましょう

自分が神になろうとする人間の、傲慢さへの戒めも感じます。
相変わらず地球人を震撼させることを書くウェルズさんです。

解放された世界

1914年発表のSF小説。力を求める人類はどこへ向かうのか、これまで以上の深さで懸念を表明した、世紀末的作品です。

創作と言いながらも、石油やガソリン等の燃料の枯渇、核兵器の開発までも予見されていることに、ひざがガクガク言い出します…

いまや現実となってしまった問題もあるだけに、大変重い内容ですが、「日本人が読むべきウェルズ」は本作ではないかと思います。

世界文化小史

創作小説はあらかた読んでしまったというウェルズ上級者は、評論に挑戦を。

ウェルズは、多くの傑作サイエンスフィクションを創作したのち、評論執筆や社会活動へ移っていきました。

『世界文化少史』では人類の発生から現代までの過程を語っています。
科学的な視点を持つ歴史書だというところが興味深い!

内容の難易度は高めですが、小説を思い出させる名調子に引っ張り込まれます。

創作小説では未来への警鐘をガンガン鳴らしまくったウェルズですが、評論からは人類への信頼も多く持っていたことが感じられます。

世界文化史大系

全4巻の歴史書。
上に挙げた『世界文化小史』は、『世界文化史大系』の簡易版との噂(それでも十分興味深いですが)。ウェルズに強い関心があり、かつ古書蒐集の趣味もあるかたなら、『文化史体系』も拝みたくなるはず。しかし、触れるのがこわいような希少本です。

五島勉『H.G.ウェルズの予言された未来の記録』

直接ウェルズの評論を読むのは大変だけれども、まるで未来を予期していたかのような、彼の慧眼が気になって仕方がない……! というかたに推したい一冊。

やや恣意的ではありますが、ウェルズはここまで未来を見通していたのだということを説明してもらえます。
日本人がまとめたため、翻訳物より分かりやすくてちょっとラクできるかも!?

ダヴィドソンの眼の異常な体験

電子書籍であるこちらには、紙の本では見かけない、きわめて珍しいウェルズ作品が収録されています。

「SFの父」と呼ばれるほど超有名作家でありながら、案外、このように日の当たらない作品も残されているウェルズは、未だに摩訶不思議な存在で読み尽くせずにいます。調べ次第、情報追加していきます!

※過去、某番付メディアに掲載した記事を採録しました。筆者のその時の好みで変更する場合があります。
初出: 2016年05月11日

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