全部モノクロ、一部サイレント。今見ると斬新なカール・Th・ドライヤー(ドライエル)の聖映画 vol.2

vol.1からの続きです。

ールとかドライヤーとか言っても、別に髪のスタイリングの話ではなく、たまたまそういう人名なのです……。デンマーク出身の映画監督、カール・テオドール・ドライヤー(ドライエル)の古典映画は、本当の映画好きにのみオススメします。

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怒りの日


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魔女狩りも、ドライヤーの映画を語る上で外せないテーマ。

時代は中世、とある村で牧師が迎えたうら若き後妻アンネは、実は魔女でした。
年の差がありすぎる夫婦関係に満足できなかった彼女は、神学を学んでいた前妻の息子と惹かれ合い、ついに禁断の関係に走ってしまいます。

望みがかなってしまったことで、自分が魔女だと自覚せずにはいられないアンネ。
そんな中で、魔女狩りの手が彼女に迫っていく―――!

みなぎる緊迫感は、異常なほど。
くわしくは控えますが、魔女狩りになぞらえて何か他の罪について表現しているのではないかという説があり、信憑性を感じます……。

裁判長


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ール・ドライヤーの監督第一作。

遠い昔のあやまちによってできた自分の娘が、裁判の被告として目の前に現れ、死刑を宣告される。罪の意識にくるしんだ裁判長、カール・ヴィクトルがとった道とは―――

鮮やかなフラッシュバックが特徴的です。

それと、必要以外のものはすべて排した絵作りが素晴らしい…☆ 限られた空間のなかで人物の心理をデザインするドライヤーの才覚は、デビュー作からすでにあったもののようです。

サタンの書の数ページ


カール・Th・ドライヤー コレクション/ クリティカル・エディション サタンの書の数ページ

人間を誘惑し堕落させるため、四時代に現れるサタンの視点を通して、いつの世も心が弱く欲深きひとびとの姿をあぶりだす、サイレント映画。

今も昔も変わらない人間の本質を、悪魔はよくお見通しなのです。

むかしむかし


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数々の求婚をこっぴどくふって、周りを困らせてきたわがまま姫が、身分を剥奪されてまずしい暮らしを送りながら、真実の愛に目覚めていくおとぎ話。
豪奢で華やかな前半と、廃屋のような家で暮らす後半の落差を、ヴィジュアルで楽しめます。

私が男なら、城を訪れた求婚者たちに思いっきり見下した態度をとる、高慢ちきな王女時代のほうが好みかも!?
個性的なじゃじゃ馬ヒロインも、すっかり男性に従順になって、めでたしめでたし。という、よくある結末は男性ご都合主義で、どうも頷けないので……。

しかし、言葉ではなく構図、映し方によって、その状況に置かれた人物の立場と心境を表すドライヤーさんの特性が、この物語に奇跡的にはまっているので魅せられます。

 

まとめ

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いかがでしたか?

ういえば、昔の映画って宗教モノが多いですよね☆
特にドライヤーはキリスト教の影響が強い映画作家だから、続けて見すぎるとちょっと参ってしまうかも……!?

しかし、巨匠たちが映画を通して、死生観、人間の業という、精神の奥深いところへ根差したテーマに真摯に向き合ってきたことは、映画史を語る上で欠くことのできない部分なのでしょう。ここはシリアスにならなくちゃね。

※掲載していたランキングサイトが終了したため、こちらに再録させていただきました(__)